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癌治癒をうたう健康食品、サプリメントの見分け方(上) 2004年 [サプリメント・健康食品]

2004年8月31日小針店で印刷・配布した「畑の便り№04‐36」の加筆再録

 「信用した姉は乳がんの患部が腐っても『健康食品を使う治療法でがんが消える、治る』と言う教授の言葉を信じていた。早く手術すれば治ったのに悔しい」(東京都・鈴木栄子)

  全国のがん患者と家族約千人でつくる「日本がん患者団体協議会(NPO法人)」などは2004年8月18日、近畿大学・腫瘍(しゅよう)免疫等研究所の八木田旭邦(やぎたあきくに)教授が著書『新免疫療法でガンを治す』(講談社)などで「サメの軟骨やキノコからつくった健康食品と医薬品で免疫力を高める治療治療法・新免疫療法でがんが消える」と虚偽のデータを掲載、都内のオリエント三鷹クリニック(http://www.orient-ct.ne.jp/)などで「低い効果にもかかわらず治療効果が高いと説明し、患者を信じ込ませて、高額な医療費や毎月平均二十万円もの健康食品代を払わせた」という詐欺容疑で近く警視庁に告発・告訴すると発表しました。

新免疫療法でガンを治す (健康ライブラリー)

新免疫療法でガンを治す (健康ライブラリー)

  • 作者: 八木田 旭邦
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1999/12
  • メディア: 単行本

 

この裁判は2005年6月23日に判決。

 東京地裁の佐藤陽一裁判長は「一般的な基準に従えば、新免疫療法の治療効果は八木田・元教授の公表数値と大きく異なる可能性が明らか。元教授は正確な情報提供の義務を怠った」と認定。八木田・元教授は「手術の必要性を説明した」というが、「信用できない」「手術が可能だったのに説明しなかった」とし、「手術を受けていれば女性が亡くならなかった可能性が高い」と不法行為責任を認定。約五千万円の支払いを命じました。八木田・元教授は控訴し、同年9月29日に和解に至りました。

八木田・元教授、オリエント三鷹クリニックは、和解条件を発表しています。
http://www.orient-ct.ne.jp/suit/suit2.htm

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和解で非を認めたか

 その和解発表では

「東京地方裁判所は、これらの主張の医学的検証をほとんど行わないまま、遺族側の主張を鵜呑みにして、当クリニックの免疫療法の治療効果を実質的に否定し、新免疫療法に関しその治療効果を自ら否定せよと言うにも等しい不当な説明義務の存在を認めて、当クリニックに説明義務違反を原因として菊地さんの死亡についての損害賠償を命じました」

つまり新免疫療法ではなく「手術を受けていれば女性が亡くならなかった可能性が高い、それを説明しなかった」(佐藤裁判長)という見解は、「免疫療法の治療効果を実質的に否定し、新免疫療法に関しその治療効果を自ら否定せよと言うにも等しい不当な説明義務」だと八木田・元教授は断じています。

この点は、和解では「免疫療法の対象者が外科手術を受けることなく、死亡したという重い事実の前に、さらに懇切丁寧に強く外科手術を薦めるべきであったということを認めて、今回の和解においては、菊地さんの御遺族に慰謝料をお支払いすることとなりました。」となっています。

新免疫療法を受けている人に「さらに懇切丁寧に強く外科手術を薦める」には、「新免疫療法の治療効果を自ら否定」せざるを得ないと思います。

その新免疫療法の効果の医学的検証については、「不適切な表現があり、免疫療法に対して誤解を招きかねない旨の御批判が寄せられておりましたが、当クリニックはこの御批判を謙虚に受けとめて、刊行物を絶版」「近日中に新たな出版物を出す予定です。この中には最新の治療実績も盛り込む所存です。」となっています。

オリエント三鷹クリニックの八木田旭邦医師の著作は、この裁判前に出された教授肩書き時代のものは古本でしか入手できません。今アマゾンで入手できるのは、2012/11/7刊行の「がん新免疫療法で『余命宣告』に克つ 長期経過症例で見るがん治療の効果」などです。

がん新免疫療法で「余命宣告」に克つ 長期経過症例で見るがん治療の効果

がん新免疫療法で「余命宣告」に克つ 長期経過症例で見るがん治療の効果

  • 作者: 八木田旭邦
  • 出版社/メーカー: イースト・プレス
  • 発売日: 2012/11/07
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

 

がん新免疫療法で「余命」に打ち克つ―症例で見るがん療法の効果

がん新免疫療法で「余命」に打ち克つ―症例で見るがん療法の効果

  • 作者: 八木田 旭邦
  • 出版社/メーカー: イースト・プレス
  • 発売日: 2007/12/01
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

新免疫療法の治療効果は裁判前後でかわった??

裁判前の著作で、八木田旭邦・近畿大学腫瘍免疫学研究所教授(当時)は次のようの治療効果を公表していました。

「これまでに『新免疫療法』を受けられた患者様は10,000名以上(他院での診察含む)にのぼっています。効果判定に必要とされる複数回の血液検査を受けた患者様数は、このうち3763名(2002年8月末現在)です。この患者様方の治療効果を判定しました結果、CR(著効)とPR(有効)を合わせた治療奏効率は36.3%で、これにLong term NC(長期不変)を加えますと53.8%となり画期的な奏効率であります。長期不変とは癌が縮小しないが増殖を抑制することで延命につながります。患者様の大部分が末期癌や進行癌であることを考慮しますと、この治療効果は驚異的な数値であると学会でも評価されるようになりました。」

”御批判が寄せられた”点は、基本的には画像によって治った、治らないを判断し療法を評価します。癌治療学会の効果判定基準もそうなっています。しかし、新免疫療法を八木田教授は血液検査、つまり腫瘍マーカーのみで判断しています。腫瘍マーカーは癌が憎悪しても正常値であったり、憎悪しなくても腫瘍マーカが上がることは珍しくないのです。

また、Long term NC(長期不変)は癌治療学会の効果判定基準などでは、効果があった「奏功」に入れません。八木田教授は効果ありに入れています。

また、新免疫療法以外の治療法を行っていても、治癒などの効果は全て新免疫療法としていました。「手術で腫瘍を摘出した患者を(新免疫療法で)癌が消失した患者に数えていた」と報じられました。

このような変な判定基準で好き勝手にやれたのは内部告発によれば「八木田氏によって氏に都合の良いように判定」していた。八木田旭邦・近畿大学腫瘍免疫学研究所教授(当時)は、妻の会社で製造させた特製サプリメントを投与する新免疫療法を施術し、その効果の有無の評価も、八木田氏自らが判定していた。選手と審判・レフリーの二役をやっていたら、いくらでも都合の良い結果「画期的な奏効率」が出せますね。

それを「この治療効果は驚異的な数値であると学会でも評価」とあります。

学会発表は口頭発表(質疑応答の時間あり)とポスター発表があります。ポスター発表は論議や質疑の学会での時間は取られていない。物理系の学会なら永久機関ができたといった定番のトンデモ系発表があります。科学者は科学は未完成であるから、ひょっとすると永久機関といったトンデモ系ができる可能性を否定しない。だから学会から、学会発表から締め出すことはしない。しかし、良くて無関心や冷笑です。誰も質疑や論議に貴重な時間を費やそうとはしない。

学会会場に「画期的な奏効率を示したポスター」を張っても、、この奏効率は異常とか誰も云わないのが通例です。それを「治療効果は驚異的な数値であると学会でも評価」と八木田氏が自ら言っているのです。

癌治療学会の方々の目は節穴だった?

癌治療学会の見解は次のとおり。

「いわゆる新免疫療法の効果判定基準は日本癌治療学会の推奨する判定基準を用いていなかったにもかかわらず、不適切な説明により、その判定方法を採用していたかのような誤解を生じた。

ホームページ上において、驚異的な効果であると学会でも評価されるようになったとの記載をしていた事実があり、本学会における発表の事実をいわゆる新免疫療法の宣伝に利用していると受け取らざるを得ず不適切である」

癌治療学会は、いわば、勝手に俺の名(癌治療学会)を使うなと言っているだけです。余り当てにならない腫瘍マーカーを使い、抗がん剤や外科手術などほかの療法も併用していても、全て新免疫療法(妻の会社で製造のサプリ投与)の治療効果とするような、選手と審判・レフリーの一人二役というやり方が妥当なのか適切なのかという癌患者に一番肝心な点は不問にしています。医学的検証はされていません。

それで、「この御批判を謙虚に受けとめて、」「刊行物を絶版」して、クリニックの新免疫療法(妻の会社で製造のサプリ投与)の治療効果の書き方も変えました。赤字で目立つようにして「当院の判定基準は癌治療学会の効果判定基準とは異なり、腫瘍マーカーを用いた効果判定となっています。」

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これで癌治療学会の批判には、応えました。がん患者には肝心の新免疫療法(妻の会社で製造のサプリ投与)の治療効果は、不明なままです。

  これに限らず、「驚異のプ○ボリス」とか「アガリ○スで癌が治った!」といった本や雑誌記事、昼のテレビ番組も花盛りです。健康保険制度では、一般の医療でも、上の健康食品ような保険の使えない医療と保険の使える医療を自由に混ぜて実施できる制度変更の話が進められています。つまり、第二、第三の八木田医師に騙されない眼力、医学博士、大学教授といった肩書きに惑わさず、情報がどの程度信用できるのか、判断できる眼を養う必要があります。

  信頼度を判定する手がかりを探ってみました。

続く 

 2004年8月31日小針店で印刷・配布した「畑の便り№04‐36」の加筆再録


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