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ヘルシーリセットの中鎖脂肪酸って何?肥満に効果?(2003年版に加筆) [油脂ー搾油、栄養、コレステロール]

2003年1月28日小針店で配布した畑の便りの加筆再録です。

「浜の真砂は尽きるとも、盗人の種はつきまじ」と石川五右衛門は言ったそうですが、現代は「世に盗人の種は尽きるとも、ダイエットの種は尽きまじ」ですね、ダイエット・バブルと業界の人は言っているそうです。さて新顔は、日清が新しく出した食用油・「ヘルシーリッセタ」。中鎖脂肪酸(ちゅうさしぼうさん)の働きで体脂肪がつきにくい健康対策オイルだそうです。
同じような効果を謳って爆発的に販売をのばした花王の「健康エコナ」。このエコナは、ダイエット効果がありそうな宣伝をしていますが、結局のところ普通の食用油と同じで、摂取カロリーが過剰ならエコナの油も、体は体脂肪にして蓄えてしまうことは去年お伝えしました。この油は、どうでしょうか。

ココナッツ油と部屋干し臭い

 中鎖脂肪酸(ちゅうさしぼうさん)は、食品では牛乳やヤシ油(ココナツオイル)に含まれています。脂肪は、グリセリンと脂肪酸が結合した物です。脂肪酸は、炭素が鎖状に結合していて、その炭素の数が8~12個の物が中鎖脂肪酸です。(我々が食べる油脂、脂肪のほとんどは12個以上の長鎖脂肪酸です)販売される物は、ヤシ油などを分解し、精密蒸留により高純度の中鎖脂肪酸を取り出し、再度、グリセリンと結合した合成品です。「ヘルシーリッセタ」の原材料の表示は「食用精製加工油脂、乳化剤、酸化防止剤(ビタミンE)」となっています。

洗剤メーカーのライオンの調査では、部屋に干した洗濯物のあのイヤなニオイ(部屋干し臭)を特徴づける「酸っぱくて汗っぽいニオイ」の「キー成分」は中鎖脂肪酸、(その酸化物)だそうです。) 

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脂肪は、腸で胆汁などの働きで細かくされ、油滴になり、そこに膵臓から分泌される消化酵素が働いて分解され、吸収されます。中鎖脂肪酸は胆汁や膵臓からの酵素がなくても分解吸収されます。(普通の約4倍吸収されやすい)肝臓で普通の脂肪より約10倍酸化されやすい、エネルギー源としての利用速度が速いのです。この特徴を生かして、手術後の人や未熟児(酵素の活性が低く、胆汁の量が少ない)のエネルギー補給に使われてきました。

 こうした用途に花王は中鎖脂肪酸100%の商品を販売していますが、その商品への花王の評価は①必須脂肪酸などの栄養に欠ける②揚げ物、炒め物には使えない、調理性に問題があるです。それで花王は中鎖脂肪酸ではなく、グリセリンに2個の脂肪酸が着いた脂肪・油を合成して多く配合した食用油「健康エコナ」を開発販売したわけです。日清は揚げ物、炒め物に使えるようどんな工夫をしたのでしょうか。

 食用油の市場規模は年間約1000億円。年々縮小し、健康面から注目されていたコーン油、べに花油、オリーブ油なども落ち込み、その分、健康オイルが伸びているのだそうです。縮小しているのは40、50代以上の世帯では、油の使用量は少ないからで、ただこの世代は肥満が生活習慣病の素地ということから、肥満に関心があり健康オイルはこの世代の需要があるのだそうです。約1割、年間100億円程度でそのほとんどが「健康エコナ」だったのですが、エコナが発がん性の疑いから販売中止、今やヘルシーリッセタの独り舞台とか。

 また日清は1988年に中国に進出。2013年3月期の中国での売上高は約150億円。中国は食用油の供給過剰が続いており、価格競争が厳しい。このため、09年に「ヘルシーリセッタ」を投入したそうです。今村隆郎社長は「中国は利益が出にくい。高付加価値品で中国製品との違いを出さなければ勝てない」と中国の富裕層に売り込みを図っています。

 話が脇道にそれましたが、中鎖脂肪酸を摂ると体脂肪が増えない、減るのでしょうか。摂取カロリーから使用カロリーを引いて、余剰があれば合成された体脂肪が蓄積するわけですし、不足なら体脂肪が消費される量が増え減少するわけです。肥満、ダイエットという点からは、「ヘルシーリッセタ」など中鎖脂肪酸を含んだ食用油にかえると摂取カロリーが減るのか、使用カロリーが増えるのかがポイントです。

摂取カロリーが減るのか

 「エコナ」も「ヘルシーリッセタ」なども、カロリーは普通の食用油と変わりません。1gあたり約9キロカロリーありますから、これに変えても総摂取カロリーは変らない。北海道の畜産試験場で、豚の飼料に中鎖脂肪酸と大豆油を添加して、その違いを調べる調査が行なわれています。それを見ると、体重や体重の増え方、脂肪層の厚さは、大豆油と中鎖脂肪酸で変りがない、同じです。脂肪の質には違いが出て、中鎖脂肪酸の方が高品質の豚肉になるそうです。

 広告や新聞記事で紹介されている健康オイルでのダイエット例を見ると、総摂取カロリーのことは触れられていない。この手の使用実験でよくあることは、この食品がダイエットに効果があるかどうか試験したいので協力してくださいと頼まれると、その試験期間中はダイエットが気になって、食べる量を減らしてしまう、つまり、総摂取カロリーが減る、そうなれば、自然に体重、脂肪は減るわけです。

 総摂取カロリーの点がはっきりしているのは、エコナのグリセリンに2個の脂肪酸が着いた脂肪・油のダイエット例です。

身体での使用カロリーが増えるのか
 米国で肥満症の治療の為に食事・総摂取カロリーを制限した実験で、エコナの油を使った方が体重の落ち方が早かった、約1%早く落ちたという例です。肥満症の治療ですから、体重、脂肪が落ちて当り前です。早く落ちるのは、肯けます。

 食事をして、血糖値が高くなるとせっせと体脂肪やグリコーゲンを合成してたくわえ、血糖値が低くなると分解して消費しているのですが、体脂肪はグリセリンに3個の脂肪酸が着いた形ですから、エコナの油は2個ですからもう1個着けるのにエネルギーを使う。中鎖脂肪酸なら、中鎖脂肪酸がまず使われて、結果的にあまってくる米やパンなどの炭水化物から体脂肪を合成するのにエネルギーを使う。つまり結果的に使用エネルギー量が増える。

 それでも、食事制限をしたうえで落ち方が1%早くなるだけですからネ。この手の健康オイルを求める人は、自主的な食事制限・摂取カロリー制限に困難を感じる人なわけで、この程度で実際のところどれ位効果があるのでしょうか。
 
著しい脂肪肝・・・安全性はどうでしょうか。
 中鎖脂肪酸は、高濃度の物が医療で使われています。出されている注意事項をみると、下痢 (便中の脂肪酸の増加)、黄疸の遷延、肝機能障害などが上げられています。
14-0316a04_.gif「ヘルシーリッセタ」の中鎖脂肪酸は、胃で消化されて、普通の油・長鎖脂肪酸より約4倍速やかに腸管壁に吸収され、肝臓に運ばれていきます。そして肝臓で代謝も約10倍速く効率良く燃やされてエネルギーとなります。それだけ肝臓に負担がかかります。 


 雄ラットに高脂肪食を食べさせた実験では中鎖脂肪酸の多い食事では肝臓に脂肪が蓄積するという結果が出ています。その高脂肪食は、脂肪エネルギー比率40%で、脂肪・油は脂肪酸組成の異なるラード、大豆油、ヤシ油(中鎖脂肪酸が多い)の3種類です。

 いずれも、体重増加・終体重には差がありませんでした。肝臓中性脂肪はラード食、大豆油食、ヤシ油食の順に増加し、特にヤシ油で著しい脂肪肝になっています。その脂肪は、ヤシ油に多い中鎖脂肪酸が少なく、逆に少ない長鎖脂肪酸が増加していました。このことから、中鎖脂肪酸が優先的に利用され代謝される反面、体内の長鎖脂肪酸の代謝を抑制して肝臓に蓄積しやすくしたと考えられています。
 黄疸、肝機能障害、著しい脂肪肝・・なんだか肝臓への悪影響が心配になります。この手の健康オイルの主要な購買層は40・50代の世代です。この世代は、飲酒などの影響で肝臓が弱っている人が多いので、特に心配です。

健康食品の副作用の監視は?
 花王の健康エコナも日清のヘルシーリッセタも、特定保健用食品(「トクホ」と呼ばれる)です。トクホは、その効果、安全性についての動物実験などのデータを厚生労働省に提出し審査を受けた物、その効果、安全性について国がお墨付きを与えている健康食品です。そのお墨付きの根拠となったデータをみれば、その効果の程や安全性がどれ位調べられているか分るはずですが、データは公表されてません。疑問や心配を解消できません。

欧州食品安全機関(EFSA)は、日本でトクホ審査で使われた試験資料を検討して、体重減少の効果は認められないとし、摂取することで体重が減少するという健康機能表示を2012年認めませんでした。欧州食品安全機関(EFSA)の「医薬品並みの厳格な審査」では、同じ試験資料でも効果なし、不明となったのです。

 エコナの脂肪酸が2個のものを約80%の含む組成の油を長期に食べる食経験を人類は持っていません。発がん性が疑われるグリシドール、代謝されるとこれに変わる、生み出すグリシドール脂肪酸エステルが通常の油のン十倍も含まれるいます。そのようなエコナが健康にどのような影響があるか、今、エコナを使った人で人体実験中というところですが、何らかの害・副作用が出たら、誰が、何処に報告し、誰が一般に公表し警告するのでしょうか。


 健康食品、サプリメント使用の先進国、米国で、健康食品の有害作用が顕われると、3割は深刻な症状を呈している事をお伝えしました。健康食品による害の顕われ方には幾つかパターンがあります。
一つは、有害成分が含まれている、去年のダイエット食品などの例です。
一つは、実際には大した効果がないのに、その効果を信じ込んで適切な治療などを受けなくなって結果的に悪化する。アムウェイなどのマルチ商法で売られている健康食品に多い例で、販売員が欲と二人連れで、とても強く購入者を説得、洗脳してしまう。裁判沙汰になっています。脂肪を燃やすお茶を飲んでいるから、安心して食べる量が増えて、結果的に肥る例もそうです。
三つめは、治療中で投与されている薬との相互作用で害が生じる場合です。ハーブのセントジョンズワート(セイヨウオトギリソウ)と強心剤や喘息薬を併用で薬の効果が顕われなくなってしまう例。一つは、医薬品と同じく特定の体質の人にだけ害が現れるものです。
 最初の二つは、「食用精製加工油脂、乳化剤、酸化防止剤(ビタミンE)」といった簡単な表示ではなく、きちんとした成分表示をさせる。効能の根拠となるデータの情報開示を義務付ける。トクホなら申請データを国が公表するなどの措置が考えられます。後の二つは、医薬品と同じように副作用の報告を義務付けるなど監視の強化が考えられます。健康「食品」と「医薬品」を区別する事に問題があるのです。

 
効果的なのは「よく噛む」

 よく噛むとその刺激で、食欲を抑える物質が脳内に分泌され食べる量が減ります。食事制限が自ずとできます。効果も確実で、副作用もありません。健康を考えるなら、残留農薬や食品添加物など有害な物、害を及ぼしそうなものを避け、偏らない食材、食品を、よく噛んで食べることが基本ではないでしょうか。


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