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絶滅したバイブル本商法がネットで復活?? 2004から2014 [サプリメント・健康食品]

2004年8月31日小針店で印刷・配布した「畑の便り№04‐36」の加筆再録

藁をも縋るにつけ込む

「医師から治癒不能を知らされたあとの代替療法(近代西洋医学以外の治療法の総称)は、万に一つの奇跡を願う患者や家族の祈りとしての要素が強い。 ・・
代替療法は実に多種多様で、漢方医学のようにいわば何千年もの臨床試験を経た安全性の高いものから、まじないや有害なやせ薬まで玉石混交。病気を冶したい一心で被暗示性の高まった患者や家族は、効くという風評だけで法外に高価な代替療法にもお金を惜しまない。 ・・代替療法をめぐる意識の差・波多江 伸子 日本経済新聞2004/9/5)」

   こういう患者、その家族をを対象とし、健康食品、サプリメントや「新免疫療法」のような代替療法の効能、理論、体験談等を書いた本を「バイブル本」といい、それを販売促進に使って法外に高価なサプリ、健康食品、代替療法を売りつけることをバイブル本商法といいます。

  「月々百万円の費用を支払うため、マンションを売り払ったがん患者の家族がいたが、病人が亡くなったあとは大黒柱と住む家を同時に失くすことになった。残ったのは、ダンボールー杯のサブリメントと付属品の健康グッズだけだったのに、遺族はボランティアの私ほど販売業者に怒っていなかった。治るかもしれないという夢を与えてくれた相手だからだろうか。(波多江 伸子

 その一方、「信用した姉は乳がんの患部が腐っても『健康食品を使う治療法でがんが消える、治る』と言う教授の言葉を信じていた。早く手術すれば治ったのに悔しい」(東京都・鈴木栄子)という方もいます。  

「バイブル本」商法

  根本的な治療法がなかったり、難治性や末期の病気で苦しんでいる人を対象とし、健康食品、サプリメントや「新免疫療法」のような代替療法の効能、理論、体験談等を書いた本を「バイブル本」といいます。医学博士や医者、大学教授などの肩書きを持つ方が著者や監修者になっていることが多いです。

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そして「ガンが治った」などの具体的な治療・治癒例を持ち出し、「○○に効くと言われています」といった風に効果に言及し、「驚くべき体験談、医師などの専門家によるお墨付き」といった保証をつけ、「天然」「食品だから安全」「全く副作用がない」「厚生労働省許可」「厚生労働省承認済み」と安全性を強調しています。「即効性」「万能」「最高のダイエット食」「新しい科学的進歩」「奇跡的な治療法」「他にない」「秘密の成分」といった過度の期待を抱かせる煽り表現があります。

その本の巻末やしおりなどにそのサプリや健康食品の販売会社やその療法を行っている医療機関、民間療法の連絡先が記載されていて、実質的な広告本です。また大手新聞社が発行する新聞の広告欄にバイブル本の広告をだし、宣伝を打つ口実にします。過去に大きな事件を起した企業で無い限り、大手新聞社ではあからさまに公共良俗に反する内容でなければ広告を拒む事はありません。また、大手新聞社・出版社が広告を掲載しているからといってこれら大手企業が広告の内容を認めているわけではないのです。しかし、大手新聞社・出版社が広告を掲載しているのだから、信じる方が多くいます。

 このバイブル本に平成16(2004年)年7月27日、厚生労働省は以下のような通達を出しました。(食安発第0727001 号)

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http://www.caa.go.jp/foods/pdf/syokuhin355.pdf


科学的根拠に乏しくとも広告のみ規制

 健康増進法の施行に当たっては、「特定の食品又は成分の健康保持増進効果等に関する書籍の形態をとっているが、その説明の付近に当該食品の販売業者の連絡先やホームページへのリンクを一般消費者が容易に認知できる形で記載しているもの」については、同法第32条の2に規定する「広告その他の表示」として取締りの対象となる旨の判断基準を示しております。 

 さて、今般、この基準に合致するものとして、がん等の重篤疾病が自己治癒できるかのような誇大表示を内容とする書籍を企画・編集し、その中に健康食品販売業者の連絡先を記載することで、読者等を健康食品の販売に誘引する書籍(以下「バイブル本」という。)を出版してきた出版社に対し、当該連絡先表示の削除等を求める行政指導を行い、改善を求めたところです。 

 特定の食品又は成分を摂取することにより重篤疾病が自己治癒できるかのような情報は科学的根拠に乏しく、一般的に同条に規定する「著しく人を誤認させるような表示」に該当すると考えられます。このような虚偽誇大広告等を行うことは、同法、薬事法等関係法令に基づき禁止されているところであり、健康食品販売業者がこの規制を免れようとバイブル本(連絡先を巻末等に表示する場合のみならず、しおり状の紙片に表示し、挟み込む場合を含む。)を出版しても、当該書籍は広告であり、これらの関係法令に違反するものであります。 

 また、バイブル本を刊行してきた出版社の中には、出版の依頼元である健康食品販売業者等が販売する商品を誇大に推奨する内容を織り込んだ書籍広告を新聞紙上に掲載し、書籍広告という体裁でありながら実質的には健康食品販売業者における販売促進効果を期待できるとの名目で、新聞広告掲載料を健康食品販売業者に負担させていた者が認められており、国民の健康保持増進に重大な影響を与えていることが懸念されるところであります。   

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 つまり、販売業者の連絡先やホームページへのリンクを一般消費者が容易に認知できる形で記載してあれば、取り締り、取締りといっても連絡先表示の削除ですが、それを行政はできる。しかし連絡先が簡単に判るように表示してなければ、それもできない。 

 2011年10月、神奈川県警(生活経済課)が、健康食品の”バイブル本商法で"を本を発行した出版社と健康食品業者を、薬事法違反で逮捕し起訴へ

 2011年10月6日、神奈川県警(生活経済課)が、健康食品の”バイブル本"を発行して販売を幇助したとし、薬事法違反で現代書林の元社長を逮捕しました。その本での健康食品を扱っていたキトサンコーワ社、その社長も起訴されました。
キトサンコーワ社HP http://www.kkowa.co.jp/

水溶性キトサン関連の商品を「がん抑制作用」などの効能を強調して販売していたキトサンコーワ社。それを見た現代書林の元社長が水溶性キトサン関連の商品を取り上げた本の出版を持ちかけました。当時の現代書林では、企画部という部署が自費出版の一種として事前に制作費などの負担や買取をしてもらうという交渉をして出版するビジネスが多かったそうです。

1999年には『 「水溶性キトサン」衝撃の治癒力―最新リポート・驚異の生理活性物質。ガン・高血圧・糖尿病・アトピーはなぜ消えたのか!? 』という本で、「水溶性キトサンで直腸ガン、肝臓ガンに打ち克つ」などという体験記が掲載され、巻末に取扱店のリスト、一番目立つようにキトサンコーワ社の連絡先が記載されたリストが付いていました。発行部数の約半分はキトサンコーワ社が買い取りました。同社は購入者に商品とともに送付、発行翌年の売り上げは前年の倍近くまで増えたそうです。

 柳の下の二匹目のなんとやらで2002年に『医師・研究者が認めた! 私がすすめる「水溶性キトサン」』を発行。12人の医師・研究者が効果を称賛する文言や病気を克服した体験者の証言が並びます。中木原和博・中井駅前クリニック院長(当時)監修で箔をつけています。巻末に一番目立つようにキトサンコーワ社の連絡先が記載された取扱店のリストが付いていました。同書は1万部発行され、キトサンコーワ社社がそのうち5000部を買取。同社は、同じように使って売り上げを増やします。

しかし、翌2003年には先ほどの通達のように書籍も一定の基準を満たした場合は広告物とみなすという厚生労働省のガイドラインが示され、現代書林はそれまで出版していた健康食品本を絶版、手元に残ったものは巻末の取扱先リストを切り取って流通させました。

医師・研究者が認めた!私がすすめる「水溶性キトサン」―ガン・生活習慣病

バイブル本商法が使えなくなったキトサンコーワ社の売り上げは右肩下がりに落ち込んでおり、10年は1170万円だったそうです。

神奈川県警(生活経済課)が動いたのは、本が出されてから約10年後で、捜査のやり方も??が付きます。  参照→http://www.tsukuru.co.jp/tsukuru_blog/2013/06/20121.html

 2013年5月、12月の横浜地裁(毛利晴光裁判長)判決は、もっと???です

 2013年の毛利晴光判決(横浜地裁)のトンデモ度

 「当該書籍はキトサンコーワ代表者と共謀の上、出版・販売した。」「当該書籍ではキトサンコーワの名称や連絡先が記載されており、効能・効果を標榜する書籍であると認定出来る。」「書店に陳列されれば一般の方に認知される状態にある。キトサンコーワ(=商品)の販売促進を目的としているのは明らかで、書店に陳列、販売されれば広告にあたる」

この本は、2002年出版で半分はキトサンコーワ社が買取。2009年には巻末の取扱先リストを切り取った形で8冊出荷だったそうで、実質的には広告を打っているとは言えない。

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それで毛利晴光裁判長は「キトサンコーワに効能の記載はなく、むしろ健康食品と書いてあり、商品自体は医薬品とは認められない」「キトサンコーワの外装からしても商品単体では医薬品と言えないのは明らか」として、明白に医薬品ではないのだからと5月には現代書林側の「販売ほう助」無罪にしています。
12月には商品に同封された書籍や印刷物の記載から「医薬品に該当することは明らか」と認定してキトサンコーワ社側は無許可販売で有罪としています。

錠剤の形態から、食品ではないとはわかります。むしろ、薬剤と紛らわしい。そういう形態で、認可された医薬品ではないからこそ、国に認可された医薬や療法には根本的な治療法がなかったり、難治性や末期の病気で苦しんでいる人が求める「新しい科学的進歩」「奇跡的な治療法」「他にない秘密の成分」といった期待を適えると思わせて、販売している。

そして「病気を冶したい一心で被暗示性の高まった患者や家族は、効くという風評だけで法外に高価な代替療法にもお金を惜しまない。 月々百万円の費用を支払うため、マンションを売り払ったがん患者の家族がいたが、病人が亡くなったあとは大黒柱と住む家を同時に失くすことになった。残ったのは、ダンボールー杯のサブリメントと付属品の健康グッズだけだった」
「信用した姉は乳がんの患部が腐っても『健康食品を使う治療法でがんが消える、治る』と言う教授の言葉を信じていた。早く手術すれば治ったのに悔しい」
こうした事態の予防として薬事法の規定やバイブル本の規制がある。

その本旨を踏まえ、実際の社会生活を直視するならこうした解釈は出てこないと思います。

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 国民皆保険の打ち毀し、アベノミクスに貢献

毛利晴光裁判長は、2006年に「休日に、職場と離れた自宅の近くで、『憲法九条は日本の宝』というビラを配った公務員」に罰金10万円・執行猶予2の判決を言い渡した裁判官です。ある意味、時代におもねる判決を出す人です。

安倍首相の経済政策、アベノミクスではサプリメントや健康食品産業は成長を図る産業とされています。その育成策で健康保険制度を、一般の医療でも、健康食品のような保険の使えない医療と保険の使える医療を自由に混ぜて実施できる制度を変えるなど、米国に倣って様々な規制緩和が論議されています。

2013年5月に安倍首相は「アメリカでは、国の認定を受けていないことをしっかりと明記すれば、商品に(「心臓、血管、循環器、関節の健康を増進する 」「男性の前立腺の健康を増進する」といった)機能性表示を行うことができます。国へは事後に届出をするだけでよいのです」この米国に倣ってと経済成長しましょうと演説しています。

毛利晴光裁判長の判決は、その規制緩和を先取りしています。

錠剤やカプセルなど医薬品に紛らわし形態でも、本体や外箱では健康食品と記載し、効能は書かない。そして効能などを記載した印刷物なども同封しなければ無罪という法判断をしたのです。

最近では書籍に替わり、ネットを使い漫画などより分かりやすい形をとり、「奇跡的な治療法」「秘密の成分」といった期待を煽り、それが適えられると思わせながらも、健康食品やサプリ成分の機能性に説明を留めることで法の網を掻い潜っている事業者も増えてきています。

そうした健康食品やサプリ成分の機能性を漫画など分かりやすい形で説明するインターネットのWEBサイトを作り集客する。その記事へのコメント欄に特定のサプリメントを称賛するコメントを別の人に出させる。 

 

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このような指南を仕事としている方もいます。「病気を冶したい一心」につけ込んで儲けようとする人、その上前をコンサルタント料などで刎ねようとする人に、本体や外箱では健康食品と記載し、効能は書かなければ無罪のお墨付きを、安倍首相に代わって毛利晴光裁判長が出したのです。


そうした情報自体の信頼度は、私たち読み手が判断しなければなりません。国、安倍首相ら日本国政府は不確定な研究結果などを利用して、タネに「病気を冶したい一心」の患者を騙す人に手助けになる規制緩和をやりますが、情報弱者を守る監視や教育はおざなりです。つまり、第二、第三の八木田医師に騙されない眼力、医学博士、大学教授といった肩書きに惑わさず、情報がどの程度信用できるのか、判断できる眼を養う必要があります。

 2004年8月31日小針店で印刷・配布した「畑の便り№04‐36」の加筆再録


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